★真夏の寒さに耐えて

夏が嫌いだ。

エアコンが苦手なのだ。

そうかと言ってパン屋の作業場はエアコンなしでは灼熱地獄状態になってしまう。

パン生地にも影響するし第一職人が参ってしまう。

パンを焼くオーブンの設定温度は200度以上、これにスチームを使うのだから、これに負けじとエアコンが

頑張って室内を冷やしてくれる。

超がつくほどの「冷え性」の私には、この寒い環境での作業が辛い。

冷え防止のためにあれこれ着込む。

 まずあったか下着を着ける。ヒートテックのレギンスにレッグウォーマーも履く。ジーンズの上からは

防寒スカートも欠かせない。

我ながらヘンテコな姿だなあ・・・と呆れつつも仕方がない。

怠れば痛みがやってくるのだから。

但しエアコンの設定温度は26度。暑がりの男たちにはちょうど良い温度らしいが・・・。

 

もう一つ夏が嫌いな訳がある。

酷暑ではパンが売れない!  これは冷え性より深刻だ。

人は気温によって食べたい物が変わる。

寒い冬にはアツアツの麺類やおでんが食べたくなるし、真夏にはかき氷やそうめんがおいしい。

涼しい部屋でパンを食べて欲しいが、猛暑の中パンを買いに行くのは辛い。

例年の事ではあるが、自然には逆らえない。

カメリアのパンが食べたいなあ・・・と涼しい日には思い出してもらえるように、今日もまた寒さに耐えて

サンドイッチを作っているのです。

 

 

 


★勝手にゴーヤ、涼を呼ぶ

 

植えた覚えはないのに、葉っぱが出てきた。窓の外にあるプランターのど真ん中、ワサワサと濃い緑の葉が勝手に生えてきた。

見覚えのあるその葉はグングン大きくなり、上へ上へと伸びていく。

ゴーヤだ!

ん?今年は植えてないぞ!

昨年は「おもちゃ瓜」一昨年はたしか「朝顔」を植えたはず。

その間にサヤエンドウにも挑戦したものの、食欲旺盛の虫たちに食べ尽くされた。

すっかりやる気を失せた上に腰痛も加わり、ただ今ガーデニングはお休み中なのに。

おかげですっかりジャングル化しているカメリアの花壇だが、酷暑の中では致し方ない。

見て見ぬふり作戦続行中に、勝手に出てきたゴーヤはなんだかうれしい。

数年前にはたしかにここでゴーヤを育てていたから、おそらく種がこぼれて土の中に潜んでいたのだろう。

それなら育てるしかない。水をやり肥料も与える。

年中張りっぱなしのネットに、これまた勝手に延びていく。

すっかり緑のカーテンとなった「勝手にゴーヤ君」は、殺風景な作業場の窓に涼を呼ぶ。

 

令和4年   盛夏

 

 

 


★うぐいすパンと嫁姑のヒミツ

 

カメリアのうぐいすパンはデカい!

元々はほかのアンパンたちと同じで、ごく普通の大きさだった。

カメリアでは、菓子パンの乾燥を防ぐために一つずつ袋に入れている。

ある日自宅にうぐいすパンを持ち帰った時のこと。

当時存命だった姑がこうつぶやいた。

「小せえパンだなあ~😒」

思わずポロリと漏らした言葉を私は聞き逃さなかった。

うぐいすパンは、緑色のキレイな餡がパン生地と混じり合っている。

この絶妙な色の配色が職人の腕の見せどころで、テキトーにやるとせっかくの緑が埋もれてしまう。餡を包んでから綿棒で伸ばす。インド料理の「ナン」状態になったそれを二つ折りにして、今度は

スパっと3回切り込みを入れる。

広げてから数回ひねってねじり棒にしてからクルっと結ぶ。

ふっくら焼き上げるのだが、どうしても時間の経過とともにペシャンコになりがち。

特に袋入れしたものは翌日にはちょっぴり小さくなってる感は否めない。

あんこが多いのだ。

姑の「小せえ」発言を聞いてしまった翌日、嫁の私は決意した。

よーし、大きく作って姑を見返してやる!

 

この日から、1,5倍のパン生地+これでもかっ!というくらいのあんこ増量したうぐいすパンが誕生した。

今だから明かす、うぐいすパンが大きいワケは、嫁姑問題から生まれたのです。

今は亡きお義母さん、おかげでよく売れてます。